先に結論を言います。引き継ぐ前に、安全・速さ・検索・AI・計測・運用・権利の7つの分野を確かめます。とくに大事なのは、ドメインとサーバーが誰の名義か、ログイン情報を誰が持っているか、バックアップから戻せるか。ここがあいまいなままだと、引き継いだあとに手が打てません。
保守の引き継ぎでいちばん怖いのは、「中身がわからないまま預かること」です。更新した途端に表示が崩れる、メールが届かなくなる、ドメインの期限が切れる。こうしたことの多くは、最初に確かめておけば防げます。
私は、次の7つの分野に分けて確かめています。分野ごとに、見るところと、よく見つかることを書いていきます。
安全:更新と、外から見えてはいけないもの
- WordPress 本体・テーマ・プラグインの版と、既知の脆弱性(弱点)がないか
- 何年も更新が止まったプラグインや、公開が停止されたプラグインがないか
- サーバーの PHP がサポート期限内か
- SSL(https)の期限と、http からの転送
- debug.log やバックアップのファイルなど、外から読めてはいけないファイルが置かれていないか
- 管理画面のユーザー名が、外から見えてしまわないか
よく見つかるのは、更新が止まったプラグインです。開発が終わったものは、更新を待っても直りません。代わりのプラグインへの置き換えを考えます。
次に多いのが、PHP が古いままのサイトです。サーバーの PHP を上げると、古いテーマやプラグインが動かなくなることがあるため、上げられないまま何年もたっている、というケースです。この場合、私は PHP を上げる前に、テスト用の環境で動作を確かめるところから始めます。
速さ:表示までの時間と、ページの重さ
Google が示す目安(主な内容が出るまで 2.5秒以内、操作への反応 200ミリ秒以内、表示のずれ 0.1以下)に収まっているかを見ます。あわせて、ページの重さ、画像の形式、キャッシュの設定も確かめます。
原寸のままの写真や、写真を PNG で保存したものが、ページを重くしていることがよくあります。トップページだけで 5MB をこえているサイトも珍しくありません。
検索:検索エンジンに正しく見せているか
- 「検索エンジンがサイトをインデックスしないようにする」のチェックが、公開後も残っていないか
- http と https、www のあり・なしが、1つの URL にまとまっているか
- canonical(正規の URL)が、テスト環境のアドレスを指していないか
- サイトマップがあるか、title がページごとに違うか、リンク切れがないか
制作中の設定がそのまま残っているのは、意外と多いケースです。「検索に出てこない」というご相談で調べてみたら、公開から何か月も、検索エンジンに「載せないで」と伝え続けていた、ということもあります。
AI:AI の回答に正しく使われるか
ChatGPT や Perplexity などの AI 検索は、サイトの文章を読んで回答をつくります。
- AI 検索のボットを、robots.txt やセキュリティの設定で拒否していないか(ChatGPT の検索に使われるのは OAI-SearchBot で、学習用の GPTBot とは別)
- 大事な情報が、画像や PDF ではなく文章として書かれているか
- 会社名・住所・電話番号が、サイトの中と構造化データ(検索エンジン向けの情報)で一致しているか
私は実際に AI に社名を聞いてみて、どう答えるか、どのサイトを引用するかも記録します。古い住所や、すでにやめた事業を答えることがあり、その場合は、サイトの会社情報と、外部の掲載先の情報をそろえるところから直します。
計測:アクセス解析が、お客さまのものになっているか
Google アナリティクスや Search Console が、制作会社のアカウントにしかないことがあります。この場合、これまでの数字を引き継げません。お客さま自身のアカウントで持っているかを確かめます。
持っていない場合は、お客さまのアカウントで設置し直します。過去の数字は残らなくても、ここから先の数字を自分のものとして持てることが大切です。
運用:ドメインとメール
- ドメインの期限と、自動更新になっているか
- メールの送信元を証明する設定(SPF・DKIM・DMARC)があるか
メールの設定が足りないと、送ったメールが相手の迷惑メールに入りやすくなります。サイトの保守とは別の話に見えて、引き継ぎで最初に困ることが多い部分です。とくに、サイトのお問い合わせから届く通知のメールが、いつのまにか届かなくなっていた、と聞くことがよくあります。
権利:誰の名義で、誰が鍵を持っているか
- ドメインが、お客さまの名義か(制作会社の名義のことがある)
- 管理画面とサーバーのログイン情報を、誰が持っているか
- メールがサイトと同じサーバーにないか(サーバーを移すと、メールも止まる)
ここがあいまいなままだと、引き継いだあとに「変えたくても変えられない」ことが起きます。
引き継ぎのときに用意していただくもの
診断と引き継ぎを進めるために、次のものをご用意ください。すべてそろっていなくても、わかる範囲からで大丈夫です。
- WordPress の管理画面に入れるアカウント
- サーバーの管理画面に入れる情報
- ドメインを管理している会社と、契約者の名前
- Google アナリティクス・Search Console の閲覧の権限
- 制作時の契約書や仕様書(あれば)
WordPress の管理画面は、ふだんお使いのパスワードを教えていただくのではなく、診断のための一時的なアカウントを作っていただく形を、私は勧めています。診断が終われば、そのアカウントを消すだけで済むからです。
外から見えること、中に入らないとわからないこと
ここまでの多くは、サイトの URL だけで外から確かめられます。一方で、アクセス解析の数字、管理画面の設定、サーバーの中のバックアップの状態などは、中に入らないとわかりません。
私は、外から見る診断を無料で、アクセス解析と管理画面・サーバーの中まで見る引き継ぎ診断を一式 44,000円(税込)で行っています。保守のご契約に進んだ場合、診断の費用は整備の費用に全額をあてます。ご契約に至らなかった場合、お預かりしたログイン情報と報告書の控えは1週間以内に破棄します。詳しくは運用・保守のページをご覧ください。
よくある質問
- 前の制作会社との保守の契約が残っていても、引き継げますか?
- まず契約書で、契約の期間と解約の条件を確かめてください。契約が残っているあいだは、作業が重ならないよう、切り替える時期を決めてから進めます。
- ログイン情報がわからない場合は、どうしますか?
- サーバーやドメインの契約者であれば、各社の手続きで取り戻せることがほとんどです。契約者が制作会社の名義になっている場合は、名義を移す手続きから始めます。
- 引き継いだら、まず何をしますか?
- 最初にバックアップを取り、そこから戻せることを確かめます。そのうえで、更新が止まっているものを、影響の小さい順に直していきます。